天生峠
(あもうとうげ)

(2000年7月24日)

この天生峠は金沢の文豪、泉鏡花「高野聖」の舞台にもなっています。

 ここは、岐阜県河合村白川村の境にあたり、標高1290メートルの峠です。今まで何回も訪れています。、ある年の夏にともかく涼しいところに出かけようと、地図を見て車で行けるところで出来るだけ標高が高くかつ2,3時間で行けるところを捜しここを訪れたのが最初です。有料で行けるところはありますが、一般道で行けるところを条件にするとここが目に付きました。案の定、ここが涼しかったのはいうまでもありません。

峠の頂上は広い駐車場になっており、トイレと案内の看板ぐらいでなにもありましせん。しかし、前に一度ここで河合村の人たちがテントを立ててイワナの塩焼きを売っていたときがあります。あのイワナのすごく美味しかったことは、今も忘れられない想い出となっています。

また、白川村の方に下りていくと白山連峰を一望することが出来ます。

 さて、今回も駐車場で休憩しました。しかし、イワナの塩焼きの姿はどこにもなく車が4,5台止まっていました。今まで、気が付かなかったのですが、そこに天生湿原遊歩道の看板がありました。そこから歩いていくとニッコウキズゲ、水芭蕉などが群生する湿原があるようです。

  今まで、これに気づかなかったのは、歩くことを最初から考えもしなかったったためかもしれません。案内板を見てもぜんぜん興味がなかったのでしょう。今回は日課となったウォーキングで歩く楽しみを知ったから敏感にこの案内板に反応したようです。

また最近花に興味をもつようになり、ニッコウキスゲに出会えるかもしれないという期待もありました。

 コンビニで買っておいたおにぎりを食べて鋭気を養った後、早速、湿原に向けて歩くことにしました。歩き始めるとここは遊歩道と言うより登山道でした。急な登りが続き道幅も狭いのです。また、途中に「クマが出てくることがあるので、ご注意下さい」という看板もありました。気軽に歩き始めたのはいいのですが、登山靴すら履いてない軽装なので少し不安になりながらも前へ進みました。

およそ20分余り歩くと湿原の案内板がある入り口に着きました。

案内

 この湿原は岐阜県の天然記念物に指定されており、海抜1,400米の位置にあります。
 太古の昔から自然のいとなみの中で、たえず新陳代謝が行われ幾万年かをかを経て出来たのがこの湿原です。
 ここに生育している植物は、植物学上特に分布上極めてきちょうなものです。

代表的な植物として
     ミズバショウ・ザゼンソウ・ツマトリソウ・ホロムイソウ・ワタスゲ・ニッコウキスゲ・サギスケ・シラヒゲソウ・ミツガシワ・モウセンゴケ・コバイケソウ等他に多くの種類の植物が見られます。

平成10年4月1日
河合村教育委員会
古川森林管理センター


 湿原の周りは左の写真のような木道が敷いてあります。ぬかるんでいるのと、植物保護のためでしょう。人ひとりが通れるくらいの狭い木道です。

 右の写真を見て何かわかるでしょうか。これは水芭蕉です。よく写真などで見る花は知られていますが、花の時期を過ぎるとこんな大きな葉になってしまいます。

 木道を歩いていると、あちらこちらに水芭蕉の大きな葉がありました。

きっと花の咲いている時期は見事だろうと思われます。


 しばらく歩くとお目当てのニッコウキズゲが木道沿いに咲いていました。こんな山奥で濃い黄色の綺麗な花を咲かせているのにはあらためて自然の不思議を感じます。
 また、ササユリも見つけることが出来ました。こちらの方は同じユリ科でもニッコウキスゲの濃い色と対照的に淡いピンクの可憐な花を咲かせていました。

ニッコウキズゲとササユリを同じ場所で同じ時期に見ることができ、贅沢な気分です。

 さて、しばらく歩いていると進行方向からチリンチリンと鈴の音が聞こえてきました。だんだんこちらの方に近づく感じで、やがて鎌で木道周りの草を刈りながら歩くおじさんに出会いました。どうもここを管理されている方のようです。

 軽く会釈をかわし、あまりにも素晴らしい所だったので、「すごく良いところですね」等ととお話させていただきました。

 ここはまたブナの原生林が続き自然がそのまま残されています。ここから先は籾糠山(もみぬかやま)への登山道となっています。

今回は登山の用意もしてないので、そのまま湿原の周りを歩く事にしました。


天生湿原

 ニッコウキスゲは満開時期を少し過ぎていましたが、まだまだ沢山咲いていました。

下記が湿原のほぼ全景になります。なかにはもちろん入ることは出来ません。ロープで縄張りをしてあります。

木道沿いにもニッコウキスゲが咲いています。

  先程すれ違ったおじさんにここで再びお会いしました。そこで、またいろいろとお尋ねしました。「水芭蕉はいつが見頃ですかね」と尋ねると、5月のゴールデンウィークあたりからとのこと。しかし、残念な事にこの頃はまだ雪などによる災害復旧中で峠までの道も通行止めになっているそうです。

 ですから、麓から歩いてこないかぎりは見ることが出来ず、ほとんど一般の人の目にふれることはないようです。「なかなか、人間の都合に自然はあわせてくれないですね」と談笑しました。

 それから、おじさんの話によると結構ここを知らないで私のように偶然来る人が多いとのこと。それで、よく2回目は友達を引き連れて来られる方がいるようです。

 確かにこんな隠れた素晴らしい場所は人にも教えたくなります。でも、あまり沢山来られて自然が破壊されることは避けたいものです。反対に自分だけの秘密の場所にしておきたい気持ちもあります。そんなこともお話させていただきましたが、前日も私のように考えてお話された女性がいたそうです。

 それでもやはりこの素晴らしい場所を紹介したくて今回はこのホームページに載せましたが、人間が自然とうまく共存していくことが大事だと思います。


脇からクマが出そうな山道

 さて、そろそろ駐車場まで帰ろうとするとき、籾糠山から下山してきた家族連れに出会いました。やはり、おじさんと同じくクマよけの鈴を鳴らしながら歩いていました。

 ホントにクマが出るんだと思うと、急に恐ろしくなり鈴がないのでちょうど持っていたキーホルダーの鍵の束を手にチャラチャラと音をたてて振りながら急いで駐車場へと下りていきました。

クマにおそわれることなく無事駐車場車に到着。

ここから白川村へと下りて行きました。

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